こだまちゃんは5歳になったばかりの女の子です。
小さな路地を入った辺りから、トコトコとやってきます。
今日も、こだまちゃんは玄関をカラカラと開け、トコトコと軽やかにやってきました。
「キャン キャン キャン」とたんに、おちび犬のタロが騒ぎ始めました。
いつものことで、タロはこだまちゃんが気に入らないらしいのです。
こだまちゃんはタロが大好きで、やってくるのはタロと遊びたいからです。
そこら中タロを追っかけ、本気で怒らせてしまいました。
鼻にしわを寄せ、とがった歯を見せてこだまちゃんの手に噛みつこうとします。
「ハイ ハイ タロ、もう良いよ」タロをゲージに隠し、こだまちゃんをなだめます。
これはいつものことなのです。
「こだまちゃん、梅ジュースを飲もうか」「ハ〜イ、梅ジュースとおやつがいい」
「じゃー黒あめで良いのかな〜」「ハ〜イ」
こだまちゃんはぷっくりしたお口を精一杯開けて、あめ玉を待っています。
そこへあめ玉を落としてあげると、ほっぺの中をあっちこっちさせながら、今度はスト
ローをくわえ、梅ジュースを「チュッ チュッ」音を立ながら飲んでいます
白い小さな指が、コップとストローを大事そうに握って、コップの中を覗くとまつげが
ふわふわっと動きます。
品よくついている鼻の先を指でつついてみたくなりました。
梅ジュースが空っぽになり、お口のあめ玉が小さくなると、「かんでもいい?
決まってそう聞きます。「いいわよ」
紅いお口は飴でいっそう紅く、「カリッ カリッ」と音を立てました。
それから間もなく、ママの呼ぶ声にこだまちゃんは走って帰っていきました。
タロはゲージを開けてもらうと、しっぽを振りながら上目遣いにおやつの催促をし、
大好きなジャーキーをもらいました。
紅葉の手紅いくちびる桃の頬 はじける笑いと輝く瞳